ゆるゆるな毎日♪

日々あったことを綴ります。

最近読んだ本たち 。3ー8 .

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『あひる』今村夏子さん 角川文庫。

 

あらすじ:

あひるを飼い始めてから子供がうちによく遊びにくるようになった。あひるの名前はのりたまと言って、前に飼っていた人が付けたので、名前の由来を私は知らない。

私の生活に入り込んできたあひると子供たち。だが、あひるが病気になり病気に運ばれると、子供は姿をみせなくなる。

二週間後、帰ってきたあひるは以前より小さくなっていて…。

日常に潜む不安と恐怖をユーモアで切り取った、川合隼雄物語賞受賞作。

 

あひるの名前がのりたま!なんて可愛いの。

のりたまがどうなるのかを知りたい。薄いし読みやすいのだろうな♪

そんな気持ちで手にした作品です。

また、最後まであらすじを読まず、「不安」「恐怖」の文字を完全に見落としていました…。

断片しか見ず飛び付くところ。本当に悪い癖だと思うのですが、治りません…。

 

この作品は、3作品が収録されているのですが、160ページとかなり薄い本です。ですが、とても読みごたえがありました。(「あひる」の他に「おばあちゃんの家」「森の兄妹」が収録されています。)

あらすじに恐怖や不安と書かれている通りにどのお話も心をざわつかせ嫌な後味がありました。

 

3作ともお話の中心にいるのはどこにでもいるような子供たちです。お話もどこかで聞いた事があるような事だったり、もしかしたら、ご自身に経験があったりするような事だと思います。あひるが消えた理由も驚くようなことではありませんでした。(のりたまが…。)

それなのに、どうしてこんなにも胸をざわつかせるのか初めはとても不思議でした。それが、こうやって感想を書いているうちに気持ち悪さの正体が少し分かったような気がします。

羞恥心。罪悪感。後悔。あの頃には分からなかったタブー。理不尽だけれどどうにもできないもどかしさ。防ぎきれなかった子供ゆえの出来事の連鎖が何とも言えない気持ちにさせるのだと思いました。

そして、そこに不完全な大人の姿が加わり、よりその気持ちを増幅させたのだと思います。お伽話や夢を描いたようなハッピーエンドなんて存在しない。人はそうそう変われない。結局、子供だった人たちの多くが見てきたような大人の姿になってしまうせつなさ。動物の立ち位置の低さもまた心をざわつかせます…。

 

本当はこうした方が良いのだろうと思いながらも、何だかんだと理由をつけて見ないふりをした。自分の欲望に流されてしまった。

幼い頃はこのように自分を制御できない人が大半だと思います。今は立派な大人だと自負する方でも、後悔していることの1つや2つあるのではないでしょうか。誰もがきっとこの感情から逃れられないのではないかと思います。そして、時代が変わっても人は永遠にこれを繰り返していくのではないかと思います。

そこに目をつけた今村さんの凄さを感じる作品でした。