ゆるゆるな毎日♪

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最近読んだ本たち。 2ー21.

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『負け逃げ』こざわたまこさん 新潮文庫

 

人は生まれる場所を選べません。そして、どんな姿かたち。特性を持って生まれてくるかも分かりません。ただ与えられたもので必死にもがきながら生きていくしかありません。

ですが、住む場所とどう生きていくかは自分で選ぶ事ができます。

地方出身者なら一度は考えたであろう、地元を出るかどうかの選択。これがこの物語の中心です。

 

私は28歳の時に出る方を選びました。

その結果は日頃ブログに書いている通りです(笑)

もし、地元に残る事を選んでいたら…。

きっとそれはそれで幸せだったと思います。

出た理由は当時彼氏だった夫が東京へ転勤になり結婚した事でしたので、残っていたら全く違う人生になっていたと思います。

正社員で今も働いていたかもしれないし、遠距離恋愛が上手くいかず夫とは別れていたかもしれない。そうしたら、今は独身かもしれないし、他の伴侶がいるかもしれない。夫が地元に残る決断をしていたら家をお互いの実家近くに建て子供を持っていたかもしれない。それとも、住む場所が違うだけで、今と変わらない生活を送っていたかもしれないし、海外や他の土地へ結局は転勤していたかもしれない。

全く分かりませんが、今の生活は10代の頃に想像していたのと違うのだけは確かです。

そして、出る選択をした事を今の私は後悔していません。

こう言えるのは育った場所が名古屋市ベッドタウンで車がないと少し不便を感じるものの他には何不自由のない生活とシガラミのない生活ができたからなのかもしれません。

今の東京での生活とそこまで大きくは変わらないのです。(親戚や同級生の多くが一度も地元を出る事なく暮らしています。)

 

この物語の登場人物に与えられたのは、田んぼと畑に囲まれた美しい景色と夜は真っ暗な静けさを唯一照らす国道沿いのラブホテルのネオンがある村でした。

ここで暮らす、将来の選択を間近に控えそれぞれに不安を抱えている高校生とかつてそうだった大人たちを主人公に話は進んで行きます。

 

ある晩、ラブホテル帰りの足の不自由な女子高生野口と自転車で爆走する男子高校生田上が出会うところから物語は始まります。(二人は同級生で同じクラス)

野口は復讐の為に村中の男たちと体の関係を持っているのです。(僕の災いーあらすじより)秘密を共有する二人にはしている事の重さを心底理解できていない青さと美しさがあります。

他にも様々な問題を抱えた人たちが登場します。不倫。家庭崩壊。出会い系。

どれもディープな内容で、村特有の閉鎖的な環境がよりその問題を濃く鮮明にするのですが、人は何度でもやり直す事ができること。新しい土地で心機一転スタートできることが、どのお話もただ暗いだけのお話では終わらせません。

 

地方に暮らす進路に悩む高校生に読んで貰いたいと書きたいところですが、僕の災いがR18文学賞を取られた作品のようで、他のお話もそれを強く感じさせる事からそうお薦めできないのが残念です。

作者である、こざわさんは福島県南相馬市出身の昭和61年生まれ。珍しく私より年が下で育った環境が違うからこそ、とってもフレッシュさと刺激を感じる作品だったのだと思いました。