『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』 村上春樹さん 文春文庫。
この本の存在を知ってはいましたが、手に取ることはありませんでした。題名を読んだ瞬間に長い。内容が推測できない。難しいんだろうなぁ…。(過去の作品がすっかりトラウマ 笑)と思ったからです。
ですが、ブログで紹介されているのを拝見したのがきっかけで今、私の手元にあります。
その事実は、つくるとアカ。アオ。シロ。クロが出会い友情を育んだのと同じような一種の『ケミストリー』なのだと思います。
初めて、彼の作品で好きだと感じる物を見つけられたことがとっても嬉しいです。
(世界的に人気な物に対して、(しかも本!)その良さを分からない自分を残念に思っていました。)
ストーリーは昨年読んだ、西加奈子さんの『サラバ』に。音楽と共に話が進む所は江國さんの作品に似ていると感じました。
(はまるわけです♪)
それに加えて、主人公がどうして友人を一度にに四人も失うことになったのかについても大変興味があり夢中で最後まで読みました。
(昨年から、友人との関係に色々思うことがあるので、何か得るものがあるのではないかという期待もありました。
今回は物語を重視して読んだので、それについては、またゆっくり考えてみたいと思います。ぼんやりですが、何かを得られそうな感触があります。)
そして何より、舞台が慣れ親しんだ名古屋と東京であることでこんなにも楽しめたのだと思います。
(4人が地元を離れなかった気持ちがよく分かりますし、聞き慣れた地名や大学がよりこの物語と私の距離をぐっと近づけてくれました。)
本当にどのエピソードも私を魅了しました。初めて感じた嫉妬と誰かを欲する気持ち。灰田との蜜月。灰田父と緑川の話。沙羅との関係。縁を切られた理由。などなど、中だるみすることなく、いっきに読み切りました。
私も普段からつくると同じように自分の色(良さや長所)が、分からず、何とも言えない気持ちになることがあります。
ですが、自分の色なんて自分で知る必要はないのではないかと思えてきました。
何度もつくるが自分を空っぽだとか色がないと言うのが段々、嫌みに聞こえてきました(笑)
(容姿端麗で好きなことがあり天職を持っている人のどこが無色なのでしょう?)
そして、つくるが縁を切られた経緯や4人の現状やその時の気持ちを知る事で、他人は私が思っているより自分の事で手一杯で悪意を感じたでき事も実は私が過剰に気にしているだけなのかもしれないと思いました。
この本には沢山の事を教えて貰いました。
何度も繰り返し読みたいと思える作品でした。
私も巡礼をしたくなりました。