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この本との出会ったのはまだ10代の前半でした。学校で読書の時間が設けられており、私は幼い頃から読書が好きで、だいたい手元には一冊何だかの本を持っていたのですが、その日はなぜだかそれがなく、学級文庫と呼ばれるクラスに備え付けられている本棚から一冊借りたのを覚えています。
それがこの本でした。
そういえば、本棚の本をチョイスしたのは誰だったのだろう。今度誰かに聞いてみたいと思います。
このお話は月と貧しい絵描きの物語です。月は世界中で見た出来事をほんの短い時間。絵描きの元にやってきては語ります。そのお話を纏めたのがこの本です。
一話一話はとても短いのですが、どのお話も私の心を揺さぶります。
そして、どの話もとても美しいのです
。
月は一番最初の夜。絵描きに向かってこう言いました。
『さぁ、わたしの話すことを、絵におかきなさい 。そうすれば、きっと、とてもきれいな絵ができますよ』と。
この話がすべて美しいのは月がそういったお話を絵描きの為に選んでいたからなのですね。
絵描きがどんな絵を書いたかは本の中では分かりません。
ですが、読むたびに。私の心の中には一枚の絵が浮かび上がります。
きっと、この話を聞いて浮かぶ絵は聞いた人それぞれに違うと思います。
その事がより、このお話を美しくさせるのだと思います。
私は、絵心がありません。
私が書いた絵を観た弟は、とても心配そうに、『私の目にはこの世界がこういう風に見えているの?』と尋ねた程です。
これ、割りと大人になってからの話です‥。
弟と見えてる世界は一緒だけれど、それを形にできないだけだと伝えたら、笑っていました。
いつか、この本を絵にしたいという思いは実現しそうにないですが、せめて、誰かとこの本について語り合えたらいいなぁと思います。