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最近読んだ本たち。4ー5.

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「シメール」服部まゆみさん 河出文庫

ーあらすじー

満開の桜の下、大学教授の片桐は精霊と見紛う少年に出会う。 その美を手に入れたいと願う彼の心は、 やがて少年の家族を壊してゆき――。 逃れ得ぬ陶酔と悲痛な狂気が織りなす、極上のゴシック・ サスペンス。

 

 

シメール(フランス語)とは、キメイラの事を指し、キメイラとはライオンの頭。山羊の胴体。蛇の尾を持つ、ギリシャ神話に出てくる怪物。

この本を目にした時、まずシメールというタイトルに惹かれました。(ギリシャ神話が好き)そして、帯に「君を生きたまま、この壁に飾る事ができたなら」とあり、キメイラとその感情がどの様に絡み合うのか、少年がどの様にこの頭のおかしな人から逃れるのか(これは希望)それぐらい誰かを好きになるってどんな感覚でこの人はどんな人なのだろう。そこまで人を魅力する少年とはどんな子なのだろう。

色んな興味が湧き上がり購入した本でした。

 

 

お話は、服部さんの他の作品「この闇と光」と似た世界観でした。

信じたくないぐらい酷い話なのに、現実に起こりえそうな怖さがあります。

少年を壁に飾りたいというコメントが表す通り、主人公は歪んだ感覚をお持ちのおじさんです。

 

おじさんだけでなく、皆がそれぞれ歪みと言っても良いような個性を持っていて、最初から最後まで色んな種類の嫌悪感が湧き上がりずーっと心がざわざわしっぱなしになります。

ただ、このおじさんが凄く紳士的で関わり方を変えたら、もっとその感情上手くコントロールしたら皆幸せになれるのでは?と思えてきてしまうのが不思議でした。少年も少年で闇が深いので、おじさんが欲を導く事に転化し、良き方向へ導く事だけに専念できれば、結末は変わるような気がしたのです。

こんな濃厚な登場人物の中、「キマ」と呼ばれるおじさんの飼い猫だけが私の癒やしでした。

そのお陰もあるのか、暗くて救いのない話ですが、これも不思議と読まなければ良かったとは思いませんでした。

ゴシックサスペンスの最高傑作と帯に書かれているだけあるな。と思います。

後味は悪いけれど、(余りにもな事にが続くのでポカーンとします。)それでも、読まなければ良かったと思わないのは、おじさんが清々しいまでに自分の欲に正直で、その願望がおじさんの根回しにより徐々に実って行くスムーズさなのかもしれません。おじさんの執念凄い!

 

この闇と光を読んだ時にも思ったのですが、こういう思考があるのは本人も望んだ事ではないと思うので仕方がない事だと思います。

ですが、その欲望を向けられた側からしたら、たまったものではありません。その感情はもう悪だと思います。その感情に気付いたら、コントロールできるようにする為に必ずカウンセリングを受けて欲しいと思います。そしてそれを行う受け皿をしっかり作って欲しい。そう願わずにはいられません。