ゆるゆるな毎日♪

日々あったことを綴ります。

最近読んだ本たち。 2ー18.

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スイートリトルライズ江國香織さん 幻冬舎文庫

江國さんの作品は読み始めと読み終わりで全く逆の気持ちにさせます。

読む前、甘く小さな嘘。この言葉の響きを好きだと感じました。表と裏を同時に見ているような不思議な感覚は違和感を感じつつもどこか特別な物に感じ、それをいいなぁと思ったのです。ですが、読むに連れて甘美な部分はすっかり成りを潜め「嘘」によってダークな部分が色を強めていくのです。

あんなにも美しく感じた「スイートリトルライズ」という言葉もラストにはすっかり汚れてしまった様に感じました。

(ですがなんとなくそれも悪い事ではないと思います。これこそが本の姿なのだとすら感じました。)

 

今回の主人公はテディベア作家の瑠璃子。

彼女は夫の聡と都内のマンションに二人で暮らしています。

瑠璃子は善悪が分からないと言うより、善と悪が混じりあって境を持たないのではないかという印象を受けます。

それは彼女をとても幼く見せます。

夫に向けて一日の事を話し恋しがる様子はどの家庭にもある事だと思うのですが、彼女の場合はまさに母に1日の出来事を報告する少女の姿そのもので、聡の瑠璃子への対応にもとても違和感を感じました。二人は夫婦だけれど、私が想像する形とは少し違うのです。

二人の間にも愛は存在しているはずなのに逆にその事が私をとても淋しくせつない気持ちにさせます。

 

私から見ると二人は幸せそうには見えません。窮屈そうに見えるのです。それでも、お互いに好きな様に生きている瑠璃子と聡はきっと幸せなのだと思います。

二人にとってお互いはなくてはならない存在で、1日の最後に必ず帰る場所。そうあることが男女としての愛よりも大切なのだと思います。ある意味絆は強いように思います。

夫婦って色々で奥が深いなぁと思いました。

 

瑠璃子と聡の互いの嘘がばれた時に二人はどうなってしまうのでしょうか。

私の予測では自分のしたことを棚に上げて、聡が深く傷付き二人は離れるように思います。

瑠璃子の感覚は幼いけれど、精神的に弱くて守られているのは聡の方だと思うのです。

瑠璃子は淋しがり屋だけれど一人で立つこともちゃんとできる人の様に感じます。

悲しい顔をしつつも聡を思ったよりも簡単に手放すような気がするのです。

 

今回のお話は後味がスッキリせず、好みではありませんが、江國さんの世界観を堪能できる作品ではありました。