あらすじ:今から百年前、殺人は悪だった。10人産んだら、一人殺せる。命を奪う者が命を造る「殺人出産システム」で人口を保つ日本。会社員の育子には十代で「産み人」となった姉がいた。蝉の声が響く夏、姉の10人目の出産が迫る。未来に命を繋ぐのは彼女の殺意。昨日の常識は、ある日、突然変化する。
題名とあらすじに衝撃を受けて思わず手に取りました。殺意によって産んだ子を愛せるのか、そしてそれを知らされた生まれた子は何を感じどう生きるのか…。
そこまで、憎む相手はどんな人物で、一体、その人物の間に何があったのか。
そんなシステムで保っている国の内情はどんな物なのか。
そして、その権利は女性だけに与えられた特権なのか…。あらすじを読んだだけでこんなにも疑問が浮かぶことはそうそうありません。
村田さんの作品は『星が吸う水』を読んだことがあります。その時は全くはまらなかったので、購入する事に迷いがありましたが、それ以上に疑問を解消したくて購入を決めました。
物語は、OL二人の「生み人」に関する会話から始まるのですが、先ずその会話の内容に驚き、15ページ目の「殺人出産システム」から外れる殺人への罰則のグロさに思わず目を反らしてしまいました。
人の死に人の死で成敗するなんて野暮だと言うのがこの時代の共通認識の様なのです…。
謎は溶けましたが、後味はかなり悪いです。
こんな世の中にならないといいなぁ。
そして、次のお話、『トリプル』も受け付けませんでした。三人で付き合うのが若い人の間で流行るといったお話なのですが…。R18指定でないのが不思議です。
キスの仕方が想像していなかった方法だったので、三人でするとそうなるんだ!と勉強になりました(笑)
まず、私には同じ熱量で二人を愛するなんてできないし、一番になりたいと思うので、その関係を受け入れられることが可能な事に凄いなーと思います。
一夫多妻制も口には出さないけれど、好きな順番があると思うのですが違うのかな?
三つ目は「清潔な結婚」異性に求めることを一切持ち込まない、まるで兄弟の様に家族としてだけの愛情で暮らす夫婦のお話です。一番現実味があり、夫婦ってなんだろうと考えさせられるお話でした。
四つ目は死なないので、自分で死に方を決めるというお話。かなり短いのですが、インパクトのあるお話しでした。
私は勝手に訪れる今のスタイルがいいです。
決められず、ダラダラと生きて地球最後の日を見ることになりそうなので…。
最後まで読んでみて、自分が体験していないこと、価値観と違うことを受け入れるのは難しいけれど、それを否定することなく、自分は自分で信じる物を大事にしていけたら良いなぁと思いました。
どのお話も濃くて、「終電の神様」が恋しくなりました(笑)中和しながら読むと良いかもしれません。
帯の誰も覗いたことのない溝を覗く作家。最大の衝撃作。どちらも偽りなしです!
村田さんは芸術学科を卒業されたというプロフィールに納得しました。独自のセンスを感じます。私には想像も考えたことのない世界を見せていただきました。
読んで良かった。悪かったかは別にして…。
読み終わった後にTVで観た、濱田岳さんのアメリカ像と過ごす番組に癒されました♪
子像も可愛いけれど、濱田さんも可愛い。。。
もう一冊、手元にあるけれど、忘れた頃に読みたいと思います。